門司港駅周辺は、戦前のレトロな雰囲気を生かした観光地になっており、歩いて見てまわると楽しいエリアです。門司港駅の近くには九州鉄道記念館もあり、鉄道の街としての門司港の歴史にも触れることができます。
(ボンネット型の特急「にちりん」)
・門司港駅周辺を観光
門司港駅はもともと門司駅を名乗り、関門連絡船による本州―九州連絡の九州側の窓口を担っていました。しかし、1942年に関門トンネルが開通することに伴い、門司港駅と改称し、もともとの大里駅が門司駅と改称されました。門司港駅は本州と九州を結ぶ鉄道輸送の流れからは外れましたが、長らく九州の鉄道の起点として扱われ、2000年までは、JR九州の本社が置かれていました (JR九州は、2000年まで福岡と門司港の2本社体制でした)。
門司港駅は現在でもその名残をとどめ、広大な敷地を有しています。私が訪れた時も、様々な列車が休んでいました。また、駅舎は重要文化財に指定されています。2012年から2019年にかけて駅舎修繕工事が行われ、現在ではレトロな雰囲気な駅舎を楽しむことができます。
(門司港駅前広場は憩いの場)
門司港駅の駅前は噴水を有する広場になっており、その広場を挟んで反対側に「旧門司三井倶楽部」があります。三角屋根が特徴的な洋風建築で、ハーフティンバー様式というヨーロッパ伝統の木造建築工法で作られています。もともとは三井物産の社交クラブとして利用されていたもので、アインシュタイン博士が来日した際は、「旧門司三井倶楽部」に宿泊しました。現在は1階がレストランとイベントスペース、2階には、アインシュタイン博士が宿泊した時の様子を再現したアインシュタインメモリアルルームと、門司出身の作家である林芙美子記念室があります。2階を見学するには入場料150円が必要です。
(旧門司三井倶楽部)
「アインシュタインメモリアルルーム」は、壁に幾何学文様が施されていて大正モダンを感じさせるほか、様々な調度品も再現されており、アインシュタイン博士宿泊時の雰囲気が感じられました。林芙美子記念室では、林芙美子の生涯や作品について解説されていました。晩年は東京都新宿区落合に住んでいたそうです。
(アインシュタインが利用したとされる浴室)
・九州鉄道記念館へ
(九州鉄道記念館)
門司港駅から歩いて5分ほどのところに九州鉄道記念館があります。JR九州が運営する鉄道博物館で、同様の性格のものに、JR東日本の鉄道博物館、JR東海のリニア・鉄道館、JR西日本の京都鉄道博物館、JR四国の四国鉄道文化館があります。九州鉄道記念館には、九州にゆかりある鉄道車両が多数展示されています。481系は485系のうち九州の電化方式である交流60Hzに対応したもので、九州鉄道記念館では「にちりん」のヘッドマークを付けて展示されていました。581系も583系と同じような見た目ですが、交流60Hzに対応したものを特に581系と呼び、新大阪駅―博多駅間の寝台特急「月光」号などに使用されました。
(「月光」幕の583系)
屋内には、戦前の電車や、特急のヘッドマークなど、九州の鉄道の歩みについて展示されていました。ジオラマの運転などもあり、300円の入場料で十分に楽しむことができます。
・「関門海峡クローバーきっぷ」とは
門司港・下関という関門海峡の両岸を巡るには、「関門海峡クローバーきっぷ」が便利です。「関門海峡クローバーきっぷ」は、おとな800円で、門司港レトロ観光線「潮風」号、関門汽船、サンデンバスの御裳 (みもすそ) 川-唐戸間に1回ずつ乗車することができ、任意の出発地から、関門トンネル人道を通って、下関と門司港を巡って一周することができます。「関門海峡クローバーきっぷ」は、列車・バス・汽船の有人切符売り場で購入することができます。というわけで、九州鉄道記念館駅の切符売り場で「関門海峡クローバーきっぷ」を買って、関門海峡を一周してみることにしました。
(関門海峡クローバーきっぷ)
門司港レトロ観光線は、北九州市が施設を保有し、平成筑豊鉄道が列車の運転を担当しており、上下分離方式で運転される鉄道路線です。鉄道路線といっても、九州鉄道記念館駅―関門海峡めかり駅間でわずか 2.1 km の日本有数の短い路線です。また、毎日運転されているわけではなく、基本的に土日のみの運転です。路線の愛称はネーミングライツにより「北九州銀行レトロライン」となっています。もともとは貨物線の廃線を観光用として復活させたものであり、関門トンネル人道、サンデンバス、関門汽船とともに関門海峡の周遊ルートが形成しています。2009年には廃線を再活用した観光振興が評価され、「日本鉄道賞」を受賞しています。
(トロッコ潮風号)