日本国内の大手鉄道会社は株主優待乗車券を発行しており、これは1回の乗車が無料になるというものです。これを使えば長距離をお得に移動することができ、路線網の長い東武鉄道や近畿日本鉄道などでは特に割引度が高くなります。今回は東武鉄道で株主優待乗車券を使って、栃木県の主要観光地である宇都宮と日光をめぐりました。
(特急「きりふり」、新栃木駅にて)
東武鉄道は他の大手私鉄会社と同じく、株主に向けて優待乗車券を配布しており、これを利用すれば1回の乗車が無料になります。株主優待乗車券を発行してもらうには東武鉄道の株をいくらか保有しなければならす、数十万円の投資が必要になりますが、金券ショップで安価に入手することができます。特に、路線が長く長距離乗車で運賃が高くなる東武鉄道では、株主優待乗車券で割安に旅行することができます。今回はこれを利用して、宇都宮と日光をめぐりました。
・東武浅草駅から特急「きりふり」に乗車
(東武浅草駅、こう見るとこじんまりとしていますね)
東武浅草駅に入るところから今回の旅を始めます。東武浅草駅は言わずと知れた東武鉄道のターミナル駅です。東武線は隅田川を渡った後すぐに浅草駅のホームに入りますが、浅草駅は土地の制約から隅田川に平行になるように建設されています。つまり、東武線の線路は隅田川を渡った後、ほぼ直角にカーブします。
(急カーブを曲がって浅草駅に入線する特急「りょうもう」)
カーブ部分からホームが始まっているため、電車とホームの間が極端に空いている箇所があり、その部分はドア扱いをしなかったり、駅員さんがステップを用意してくれたりと、ほかの駅では見られない対応がとられています。この土地の制約から、東武鉄道の浅草駅発着の特急列車は6両編成以下となっています。
(350系で運転される特急「きりふり」)
今回私が乗車したのは、特急「きりふり」号です。特急「きりふり」は、東部350系の4両編成で運転される列車です。東部の特急と言えば、100系スペーシアや500系リバティが有名かつ人気ですが、1日1往復だけ「きりふり」が運転されています。350系も含めた東武300系電車は、1991年に登場しましたが、元は1800系だったのを改造したものであり、かなりの高齢車両と言えます。元1800系の改造車のうち、6両編成のものを300系、4両編成のものを350系と呼びます。300系はすでに運用を離脱しており、現在は350系のみ特急「きりふり」として運用されています。
(後ろ側の幕は故障していたらしく回送幕を出していました)
350系は白に赤い帯の入った塗装で、スペーシアやリバティと比べると時代を感じさせる雰囲気で、JR東日本の185系にもなんとなく似ています。座席もリクライニングしないクロスシートであり (ただしフットレストがあります!)、設備がほかの特急用車両に劣る分、特急料金が割安に設定されています。
(暖色系の落ち着いたモケット、フットレストもついています)
私が乗車した浅草駅―新栃木駅間では、スペーシアやリバティが1250円なのに対し「きりふり」が840円、浅草駅―日光駅間では前者が1470円なのに対し後者が1050円であり、3分の2程度の料金に抑えられています。
(急カーブで前の車両が見えます)
浅草駅を10:38に発車、急カーブを曲がって隅田川を渡ります。東武鉄道では2020年春の緊急事態宣言発令に伴って特急列車を運休していましたが、この日から運転を再開しました。「きりふり」に乗車しているお客さんは、浅草発車時点では数名しかいらっしゃいませんでした。
(車内はガラガラでした…)
東京スカイツリー、北千住、春日部、と停まって、そのあとは栃木駅まで40分ほど走り続けます。春日部駅を過ぎると、田んぼの中に防風林を備えた民家という風景が見えるようになり、北関東にやってきたという感じがします。栃木駅の隣の新栃木駅で乗り換えます。
(水田と防風林)
(田植え前で水鏡がきれいです)
新栃木駅11:55着、栃木駅よりも新栃木駅の方が開業したのは後ですが、栃木駅は高架化されているためこちらの方が新しく、新栃木駅の方が古めかしい雰囲気です。
(「きりふり」はこの後東武日光駅に向かいます)