四国鉄道文化館を見学【四国満喫きっぷの旅1日目③】

・四国鉄道文化館と十河信二

 伊予西条の駅前には国鉄道文化館があり、これは北館と南館から構成されています。正確には、四国鉄道文化館は「鉄道歴史パーク in SAIJO」の一部であり、「鉄道歴史パーク in SAJO」は四国鉄道文化館北館、四国鉄道文化館南館、十河信二記念館、観光交流センターの4つの施設から構成されています。入館料は300円で、これで4つの施設 (観光交流センターは観光案内所と物販スペースなので3施設か?)すべてを見ることができます。

 

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(伊予西条駅に隣接する十河信二記念館)

 

 北館にはディーゼル機関車DF50形0系新幹線が展示されています。DF50形の「D」は「ディーゼル」を表します。電気機関車だと「E」がつき、蒸気機関車だと何も付きません。昔は「機関車」といえば「蒸気機関車」を指したということでしょうか。「F」は動輪数を表します。「DF」だと、5軸のディーゼル機関車ということになります。四国鉄道文化館のDF50形は、日本で唯一走ることができる状態で保存されているもので、大変貴重です。ちなみに、線路も予讃本線につながっており、走らせようと思えばいつでも走らせられる状態のようです。

 

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(0系新幹線と並んで堂々と展示されているDF50形機関車)

 

 0系新幹線は言うまでもないことですが、初代の新幹線車両として活躍しました。1964年の東海道新幹線開通から登場し、営業運転を終了したのは2008年であり、半世紀近くにわたって活躍しました。しかしながら、四国には新幹線は通っていません。なぜ四国に0系新幹線が展示されているのでしょうか。そのカギを解くカギが十河信二(そごうしんじ)にあります。

 

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(新幹線が走っていない四国に0系新幹線が…)

 

 十河信二1884年に現在の愛媛県新居浜市に生まれ、1945年から1946年にかけて愛媛県西条市長を務めています。ただし、一般的には彼は第4代国鉄総裁として知られていると思います。十河信二は1955年から1963年にかけて国鉄総裁を務めました。この時に彼が推進したのが、東海道新幹線計画です。東海道新幹線計画の前身は、「弾丸列車計画」として戦前からあり、一部では工事も進められていましたが、太平洋戦争の影響で凍結状態となっていました。

 十河信二国鉄総裁に就任した1950年代は、日本が太平洋戦争後の復興を遂げつつある時期であり、東海道線の輸送量も増加し、需要がひっ迫しつつありました。これに対応するため、東海道線の線路を増やすことが検討されました。単純に考えれば、当時ある線路の横に2本新たに線路を作るのが一般的であり、首都圏のいくつかの路線や関西の東海道線ではこの様式が採用されています。しかし、十河信二は将来の発展性に着目し、別経路で、しかも国鉄で採用されていた狭軌ではなく広軌(国際標準軌)で、東海道線の別線を建設しようと考えました。この経緯から、今でも新幹線の運賃は、在来線との乗換駅発着であれば在来線と同じになっています。また、十河信二は、莫大な新幹線建設費を捻出するため、世界銀行に借款を申し入れ、認めさせることにも成功しました。東海道新幹線十河信二の熱意によって完成したといってもよく、十河信二は新幹線の生みの親とも言えます。

 

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(新幹線の生みの親、十河信二)

 

 そのような経緯から、0系新幹線が四国鉄道文化館に展示されており、また、十河信二記念館も併設されているわけです。十河信二記念館では、彼の部屋や銅像を見ることができます。

 南館では屋外にフリーゲージトレインが展示されています。フリーゲージトレインは、軌間変換装置を通過することにより、新幹線と在来線の両方に直通できる車両です。この様式を遣えば、例えば四国から瀬戸大橋を経由し、岡山から新幹線に直通して新大阪に乗り入れるといったこともできるわけです。現在展示されているのは第二次試験車であり、これは現役を引退しており、現在は第三次試験車によって技術開発が行われています。

 

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(フリーゲージトレイン第二次試験車)

 

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(フリーゲージトレイン第二次試験車)

 

最近では、九州新幹線北陸新幹線への導入が見送られたことがニュースになり、先行きが不安定なフリーゲージトレインですが、スペインなどでは実用化された例もあります。また、日本国内でも、近畿日本鉄道近鉄)が導入に意欲を示しています。近鉄は、私鉄一長い線路網を持つことで有名ですが、狭軌と国際標準軌が混在しており、フリーゲージトレインを使った直通列車を走られることができれば、大きなメリットになるでしょう。また、新幹線は高速運転を前提とするため技術開発のハードルが上がりますが、在来線同士の乗り入れであれば高速性能は求められないため、それなりに現実味があると思われます。

 南館には、フリーゲージトレインのほかに、屋内にキハ65形やC57機関車が展示されており、またジオラマも展示されていました。ゴールデンウィークということもあり、子供たちが歓声を上げていました。四国鉄道文化館には1時間ほど滞在していました。

 

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(「貴婦人」ともよばれるC57機関車)

 

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(キハ65形、子供達には見向きもされていませんでしたが…)