広島にあった日本唯一の公共交通機関とは【松山・広島割引きっぷの旅②】

広島近郊のニュータウンである「スカイレールタウンみどり坂」は、その急勾配のために既存の公共交通での対応が難しく、そこで考案されたのが「スカイレール」でした。

 

(折り返しを待つ「スカイレール」)

・「スカイレール」を体験

 せっかくなのでスカイレールに乗車してみました。改札口の脇からレールを見ると、確かにすごい急勾配です。切符を買ってホームに上がると、すでにゴンドラが停まっていました。平日のオフピークのタイミングだったこともあり、中には誰もいません。この時間帯は15分に1本の運転のようです。

 

(駅からの景色はモノレールからのものにも似ています)

 

 ちょうど反対側のホームにみどり口駅行きのゴンドラが到着しました。駅はロータリーのような構造になっており、みどり口駅までの乗客を降ろしたゴンドラは、ぐるっと回って私が乗っているゴンドラの後ろに付きます。次の便の運転に使われるようです。

 

(反対列車はロータリーをぐるっと回って回送されます)

 

 発車直前になると、何人か乗客が乗ってきました。ほとんどの人がカメラを構えており、廃止前に記念に乗ってみようという方たちのようです。スカイレールのゴンドラは、座席は8人分であり、定員は10人強といったところでしょうか。マニアっぽい人たちで満員になったゴンドラは、みどり駅口を出発し、「スカイレールタウンみどり坂」の急勾配を登っていきます。これは確かに何かのアトラクションのようですね!

 

(みどり中央駅にはスカイレールの車両が溜まっていました)

 

 唯一の途中駅であるみどり中街駅をはさんで、始発駅から10分も経たずに終点のみどり中央駅に到着します。いったんここで降りて、外からスカイレールを観察してみることにしました。みどり中央駅に着くと、自動放送で降りることを促され、ゴンドラに乗ったまま反対方向に折り返すことは認められていません。

 

(みどり中央駅を出発したスカイレール)

 

 みどり中央駅一帯はみどり坂中央公園として整備されており、坂の上から見下ろす景色はなかなか良いものです。この坂を下っていくスカイレールもなかなかカッコいいものです。

 

(スカイレールタウンを下っていくスカイレール)

 

 次の便に乗って瀬野駅に戻ることにします。スカイレールのホームは、天井までを覆う「フルスクリーン式」のホームドアが整備されており、安全対策は万全です。帰りの便には私のほかに、地元の方と思われる若い2人組が乗っており、楽しくおしゃべりされていました。幼いころからスカイレールに乗って街に出るのが当たり前の暮らしだったなんてなんだか贅沢ですね。

 

(フルスクリ-ン式のホームドア)

 

ちなみに、鉄道では主要駅に向かう方が上りということになるので、スカイレールでは瀬野駅最寄りのみどり口駅に向かって坂を下っていく方が上り便ということになります。

 

(スカイレールからの眺めは絶景)

 

 スカイレールで「スカイレールタウンみどり坂」を下っていく景色は、他の交通機関では見られない独特のものです。廃止前の良い乗車体験になりました。

 

(下りてくると瀬野駅が見えてきます)

 

呉線で呉駅へ

 瀬野駅からは山陽本線の列車で海田市駅に向かいます。海田市駅山陽本線呉線が分岐する駅で、この駅から「松山・広島割引きっぷ」の自由周遊区間に復帰します。海田市駅から呉線に乗り換えです。山陽本線は貨物の大動脈であり、呉線の列車を待っている間にも、長編成の貨物列車が走り抜けていきました。

 

(海田市駅を通過する貨物列車)

 

 呉線は、海軍の拠点である呉と広島を結ぶ路線として1903年に海田市駅―呉駅間が開業し、呉駅―三原駅間は1935年に開業しました。全線にわたり単線ですが、広島駅―広駅間は需要が大きく、日中でも快速列車が1時間に2本、普通列車1本運転されています。そのため、多くの駅で列車行き違いが行われています。

 

(海田市駅からは快速「安芸路ライナー」に乗車)

 

 呉駅は、広島駅方面から行くと広駅の少し手前の駅であり、快速「安芸路ライナー」を使うと広島駅から35分、海田市駅から30分弱で行くことができます。かつて軍都として栄えた呉市は、現在でもそれなりの賑わいがあり、呉駅はJR西日本の単線区間の駅の中では、最も利用者の多い駅になっています。