大井川鉄道のホームページを見ると、SL急行「かわね路」に乗車するためには電話かメールによる予約をするように誘導されます。しかしこれは始発駅の新金谷駅か千頭駅から乗車する場合で、途中駅から乗車の場合には車内でSL急行券を購入するという流れになります。今回はこの方法で川根温泉笹間渡駅からSL「かわね路2号」に乗車し、新金谷駅に戻ることにしました。
・SL「かわね路2号」で川根温泉笹間渡→新金谷
川根温泉笹間渡駅からの「かわね路2号」は時刻表では15:31に来るはずでしたが、数分遅れてやってきました。牽引機関車はC10型機関車でした。C10型はタンク機関車で、1930年に23両が製造されましたが、現存するのは大井川鉄道に残る1両のみだそうです。
SLにはタンク機関車とテンダー機関車があり、SL本体に石炭と水を積んでいるのがタンク機関車、SL本体とは別に石炭と水を積む炭水車 (テンダー) を連結しているものをテンダー機関車と呼びます。タンク機関車は小型で小回りが利く一方、炭水の容量が小さいため、炭水の補給をこまめに受けられる都市近郊や短距離路線で活躍しました。
一方で、長距離を無停車で走る急行列車では用いられず、このような列車には、多くの炭水を搭載できるテンダー機関車が用いられました。有名なD51 (デゴイチ) 型はテンダー機関車です。テンダー機関車は、このように看板列車などで活躍しましたが、炭水車の分だけ重量が重くなってしまい軟弱路線には入ることができない、後方視界が効かないため後進運転が難しいなどの欠点もあり、タンク機関車とテンダー機関車はうまく使い分けられていました。
客車は3両つながれており、私は2号車に乗車しました。始発の千頭駅からではなく途中駅からの乗車だったので、席が空いているか心配だったのですが…、2号車はガラガラでボックス1つを確保することができました。客車も昭和20年代製造のレトロなもので、板張りの床がいい雰囲気を醸していました。蒸気機関車時代の客車設備として蒸気暖房があります。これは、蒸気機関車で出た蒸気を客車にまわして暖をとるもので、私が乗車した客車にもこの機構が備わっていましたが、この蒸気暖房も現役とのことでした。
ところで、この解説は「SLおじさん」がしてくれました。大井川鉄道のSLには切符の検札を行う車掌さんの他に、「SLおじさん・SLおばさん」が乗務していて、車窓の解説や車内設備の解説をして、SLの旅を盛り上げてくれます。その「SLおじさん」によると、3号車は照明が蛍光灯ではなく白熱電球で、よりレトロな雰囲気が増しているそうです。また、1号車は旧二等車用の客車が使われており、あとでそちらを見てみると、お客さんの多くは1号車と3号車に乗車していました。2号車はそのような特徴に乏しいので空いていたというわけです。
「かわね路2号」の途中停車駅は、川根温泉笹間渡駅の他に家山駅のみですが、SLは電車に比べて性能が劣るため、所要時間は普通列車と変わらないか、こちらの方が少し時間がかかるぐらいです。「かわね路」は「SL急行」を名乗っていますが、まさに「急がない急行列車」と言えそうですね。急行料金は時短のためというより、レトロな雰囲気を味わうためのものなのでしょう。SLから眺める大井川の車窓は往路とはまた格別で、とても楽しいものでした。
新金谷には、遅れを引きずって、時刻表より2分ほど遅い16:11に到着しました。新金谷駅ではホームに降りてSLの記念撮影、他のお客さんも多数記念撮影をしていました。ここで改札を出るお客さんも多くいたようですが、私は金谷駅への乗り継ぎの普通列車に乗車しました。こちらは元東急7200系、先ほど鉄橋を渡っていった編成でしょうか。新金谷駅から金谷駅までは列車で5分ほど、大きくカーブする線路をのんびりと走っていきます。金谷駅で預けていた荷物を受け取り、JR東海道本線のホームに移動、ここから帰省のたびに復帰します。