一畑電車に乗って出雲大社に向かいました。出雲大社を見学した後、稲佐の浜や旧大社駅を廻りました。旧大社駅には「D51」が展示されており、出雲大社前駅のデハニ50形と合わせて観光名所になっています。駅前で割り子そばを食べて出雲市駅に戻りました。出雲大社前からの帰りの電車は縁結び電車「しまねっこ号」でした。
(旧大社駅のSL「D51」)
JR出雲市駅前のホテルをチェックアウトし、電鉄出雲市駅に向かいました。この日は午前中に出雲大社に参拝する予定を立てていて、出雲大社までは一畑電車で向かうことにしていました。
(電鉄出雲市駅)
一畑電車は出雲大社前駅と出雲市駅、松江しんじ湖温泉駅を結ぶローカル線で、映画「RAILWAYS」の舞台になったことでも有名です。一畑電車はかつて、モータリゼーションの流れに押されて乗客が減り、廃線の危機に陥りましたが、経営合理化やユニークなキャンペーンを行って利用促進に努めており、地域に愛されながら現在も運転を続けています。利用促進キャンペーンとしては、自転車を列車に乗せられる「レール&サイクル」や、日本最古級の電車であるデハニ50形の体験運転があり、体験運転は募集を上回る応募がありとても人気です。一畑電車では車両新造の費用を抑えるために、他の鉄道会社から中古車両を譲り受けて走らせており、元京王や元東急の車両が走っている姿を見ることができます。したがって一畑電車は鉄道マニアには大変人気です。
(一畑電鉄5000系)
(元京王車ですがしっかり一畑電鉄のロゴが入っています)
8:02電鉄出雲市駅発。旅の荷物は駅のコインロッカーに預けることができました。料金は300円です。出雲市駅から乗った電車は5000系といわれるものでした。5000系は京王電鉄5000系を改造し、急行型として一畑電車に導入されたものです。ちなみに、京王線の軌間は1372 mm (馬車軌道)、一畑電車の軌間は1067 mm (狭軌) と異なっており、一畑電車の軌間に合わせるために台車は営団地下鉄 (現 東京メトロ) 3000系のものに交換されています。
(一畑電鉄「しまねの木」号)
(内装には島根県産の木材が使われており、ボックスシートになっています)
内装は木目調であり、とてもおしゃれでした。これは2013年に「島根県森林整備加速化・林業再生事業費補助金」を利用して改装工事が行われたためです。したがって「木目調」ではなくて、本当に「木装」なのでした!ちなみにこの車両には愛称があります。その名も「しまねの木」!この日乗車したのは普通列車でしたが、最近は5000系も他の車両と共通運用で、普通列車の運用に着くようです。なんだか得した気分ですね。木装のボックスシートということで、気分は完全に観光列車です!
(川跡駅ではしまねしんじ湖温泉方面と出雲大社前方面の列車が相互に連絡します)
8:10川跡 (かわと) 着。出雲市駅からの列車は基本的に松江しんじ湖温泉駅方面に直通しており、出雲市駅から出雲大社に向かう場合は、川跡駅で乗り換えになります。出雲市⇔出雲大社前、松江しんじ湖温泉⇔出雲大社前は相互に連絡しており、効率的に乗り継ぎができるようにダイヤが工夫されています。一畑電車は単線ながらもこういうところは頑張っていますね。8:15川跡発。川跡からは7000系と呼ばれる車両に乗りました。
7000系は他の鉄道会社から譲渡されたものではなく、一畑電車が自社発注した車両です。一畑電車の自社発注は、デハニ50形以来86年ぶりだそうです。車体はJR四国7000系電車をベースにした軽量ステンレス構造とし、灯具類はJR西日本225系電車のものを採用しており、こうすることで車両製造費を安く抑えているようです。塗装でオリジナリティを出してはいますが、たしかにJR四国7000系電車とJR西日本225系電車のあいの子のような顔つきをしています。この7000系はよく見かけたので、現在の一畑電車の主力にあたるのではないでしょうか。出雲の田園風景を駆け抜けながら列車は出雲大社前駅へ。8:26出雲大社前駅着。
(一畑電車はのどかな田園地帯を走ります)
(出雲大社前駅はオシャレなステンドグラスもある西洋風の作りです)
出雲大社前駅はステンドグラスがあったりして、西洋建築のとてもおしゃれな駅舎です。国の登録有形文化財、経済産業省の近代化産業遺産に指定されています。隣のホームに赤くて古そうな電車が止まっていたので行ってみることにしました。これがかのデハニ50形電車でした。
(出雲大社前駅の隣に展示されていたデハニ50形電車)
「隣のホーム」と書きましたが、線路が隣接していたのでそう見えただけで、実際には駅の外側に車両が展示されていて、中に入れるようになっていました。案内板によると、デハニ50形は、今では見られなくなった貨客同時輸送を考慮した電車で、扉は手動だったようです (京都丹後鉄道では、農家の方が道の駅に運ぶ農産物を客車に乗せて運ぶ取り組みが2017年から行われています)。手動扉は、当時は普通でしたが、他の車両が自動扉に改造されていった中で一畑電車のデハニ50形は最後まで手動扉として走り、これはとても珍しいことだったそうです。展示されているのは52号車で、「RAILWAYS」で復活運転を果たした車両だそうです。また、案内板では、デハニ50形は「一畑電車唯一のオリジナル設計車両」と紹介されていました (あれ、7000系…)。車両の中にも入れるようになっていて、ロングシートで休憩することができます。また、運転台の中にも入れるようになっていました。
(展示されているデハニ50形電車は中に入れるようになっています)
・出雲大社を観光
出雲大社前から出雲大社の鳥居まで、徒歩5分ほどです。「鳥居まで」とわざわざ書いたのは、鳥居から社殿までが結構離れていて、10分ほどかかるからです。日本有数の歴史を誇る神社ですから、それぐらい広くて当たり前ですよね。鳥居からは下り坂になっています。神様は上にいるというイメージがあるのでしょうか、神社の参道は上り坂になっていることが多く、「下り参道」は全国的にも珍しいです。「下り参道」の理由には諸説あるそうです。
(全国的にも珍しい出雲大社の「下り参道」)
出雲大社では宝物殿を見学したりして (拝観料200円)、1時間ほど滞在しました。拝殿を回って本殿にお参りして、神楽殿の大きなしめ縄を見学しました。この大きなしめ縄は大注連縄というそうです。ちなみに、本殿には立ち入ることができません。たとえ皇族と言えども入ることはできないそうです。
(出雲大社の拝殿)
出雲大社から20分ほど歩き、海岸に出ました。この海岸は稲佐の浜といい、国引き神話の舞台として知られています。国引き神話とは、「出雲の国は、海の向こうの国 (朝鮮半島の新羅や石川県の能登半島) から余った土地を縄で引っ張ってきて成立した」というお話です。詳しく解説するとややこしいので興味のある方は検索してみてください。
(稲佐の浜)
また、稲和の浜は旧暦の10月である神在月 (全国的には神無月) に、全国の八百万の神々が上陸する浜でもあります。と言ってもみている分には普通の砂浜ですが…。ここで少しのんびりして、出雲大社まで戻りました。駅から歩いてばっかりだったので、出雲大社付近のお茶屋さんに入り、休憩がてらお菓子をいただきました。
(白玉ぜんざいとお茶、塩こぶをいただきました)
・旧大社駅へ
(旧大社駅の駅舎は出雲大社を真似た豪華な作りです)
出雲大社から出雲大社前駅を越えて、旧大社駅まで徒歩15分ほどです。旧大社駅はもとはJR大社線の終着駅で、かつては東京―大社間の急行「出雲」、名古屋―大社間の急行「大社」、大坂―大社間の急行「だいせん」などといった列車が出雲大社への参拝客を運んでいました。1960年には1日2000人ほどの利用者がいましたが、自動車の発達とともに利用者が減少し、1990年に大社線の廃線とともに廃止となりました。現在保存されている駅舎は1923年に作られた2代目の駅舎で、外観は神社様式を取り入れて、出雲大社を模したつくりになっています。一方で構造的には西洋のトラス様式となっており、三角形を組み合わせたトラス構造によって駅舎を支えるようになっており、内部の空間を柱などで分断しないように工夫されています。
(内部は柱を排し、広く感じるように工夫されています)
神社様式の駅舎は珍しく、重要文化財および近代化産業遺産に指定されています。現在でも、応接室やシャンデリアが残っていたりして、戦前の空気を感じることができます。また、全国各地への運賃表も展示されていて、大社駅が現役だったころの活気を今に伝えています。
(シャンデリア風の電灯)
(運賃表。東京、大阪、四国など各地の運賃が並んでいます)
ホームには「デゴイチ」でおなじみのSL「D51」が展示されていました。「D51」の「D」は動輪数を表しており、Aなら動輪1連、Bなら2連、Cなら3連、Dなら4連となります (機関車で1連や2連ということはないでしょうが…)。ちなみに動輪数を表すアルファベットの前に「D」がつくとディーゼル機関車、「E」がつくと電気機関車になります。
(SL「D51」と旧大社駅の駅舎)
大社駅をバックに「D51」を撮影すると、昭和時代にタイムスリップしたみたいですね。撮影地としての大社駅のポテンシャルがあまりにも高かったので、大社駅で1時間近く写真を撮っていました。満足して出雲大社駅前に戻り、昼食には昨晩に続いて割り子そばをいただきました。おいしかったので問題なし!
(昨晩に続き昼食は割り子そば)
出雲大社前駅に入るとなにやらピンク色の電車が待っていました。これこそ一畑電車が誇る名物車両、ご縁電車「しまねっこ号」です。
(川跡行普通電車「しまねっこ号」)
ご縁電車には京王5000系を改造した2100系「しまねっこ号」と東急1000系を改造した1000系「しまねっこⅡ号」があります。「しまねっこ号」は内装も凝ったつくりですが、「しまねっこⅡ号」は外装のみで内装は普通車のままであり、乗車するなら「しまねっこ号」がおすすめです。「しまねっこ号」の内装はつり革がハート形だったり床面にあみだくじが描かれていたりします。なんだかドキドキしますね。
(さすがはご縁電車、つり革がハート形です。これに乗って通勤通学する方の気分やいかに)
(床面にはあみだくじが!)
「しまねっこ号」は基本的に普通列車と共通運用でどの運用に入るかはランダムですが、一畑電車では「しまねっこ号」をはじめ「しまねの木」など各車両がどの運用に入るか情報を公開しています。目当ての車両がある際は参考にしてみてください。12:58出雲大社前発。10分ほどの乗車時間でしたが、内装が特徴的で飽きる暇もなく川跡駅についてしまいました。13:09川跡着。
(ミラーに映りこむ「しまねっこ号」)
13:14川跡発。ここからは行きにも乗った7000系で出雲市駅に向かいました。13:23電鉄出雲市着。
ここからは山陰本線で2018年7月から運転を開始した観光列車「あめつち」に乗って鳥取駅まで行き、「スーパーはくと」で大阪に帰ります。ひたすら列車の旅になります。