予讃線末端部を駆け抜ける「宇和海」号【松山・広島割引きっぷの旅⑬】

特急「宇和海」号は、単線非電化の予讃線を駆け抜け、宇和島駅―松山駅を90分前後で結びます。

 

(肱川を渡る特急「宇和海」号)

・特急「宇和海」号で松山駅

 伊予大洲駅は典型的な国鉄型配線で、改札口に直結した1番線ホームと、跨線橋を渡った先にある島式の2番線3番線ホームからなっています。私が乗車する「宇和海」号は、2番のりばからの発車なので、跨線橋を渡って移動します。

 

(1番のりばには普通列車が待機していました)

 

国鉄型配線の良さは、優等列車1番のりばにつけることで、大荷物の優等列車の乗客が跨線橋の上り下りをしなくてもよいという点にありますが、上りの「宇和海」号ではこの利点は生かされないようです。すでに鉄道を利用して大荷物で長距離の旅行をするという時代は去り、特急「宇和海」号も、沿線から松山市街地への通勤通学やお買い物のためのカジュアルな列車に変容したということなのでしょうか。

 

(大洲城を背に「宇和海」号が入線してきました)

 

 跨線橋からは、線路越しに大洲城を見ることができます。大洲城をバックに2両編成の特急「宇和海」号が入ってきました。2両編成という短さに都会の人はビックリしてしまいますが、両数の頼りなさとは対照的に、特急「宇和海」号は、単線非電化路線を力強い走りで駆け抜けていきます。

 

(自由席はなかなかの利用率です)

 

 その力強い走りによって、松山駅宇和島駅間80‐90分という速さを実現しており、「宇和海」号の需要はそれなりにあるようです。平日の日中の便でしたが、自由席は窓側の席がすべて埋まるぐらいの利用度でした。松山駅宇和島駅間80‐90分といえば、高速道路で移動するのとほぼ変わらない所要時間であり、高速バスとの競争も十分に成立しているのでしょう。

 

(予讃線末端部の輸送を担う「宇和海」号)

 

 特急「宇和海」号はN2000気動車で運転されており、N2000系は振り子式気動車なので、カーブでも車体を傾けて高速で通過していきます。振り子式気動車は、カーブが多くほとんどが非電化区間であるというJR四国の悪条件を克服するために、JR四国において世界で初めて実用化された方式です。この方式によって、JR四国の特急列車の所要時間は大きく短縮されました。JR予讃線伊予市駅宇和島駅間は非電化区間であり、この区間を走る特急「宇和海」号は土讃線の特急「南風」号と並んで、振り子式気動車の恩恵を大きく受けているといえるでしょう。

 

(スピード感あふれるSHIKOKUのロゴ)

 

 とはいうものの、今回私が乗車した区間は、高速化のために高規格で建設された内子線が大半を占めています。N2000系「宇和海」号が振り子式気動車の本領を発揮するのは、伊予大洲駅―宇和島間においてでしょう。それでも、私が乗車した「宇和海」号は車体を傾けながら、山の中を通る内子線を駆け抜けていきました。内子線を抜けて平野部に出たと思ったら、あっという間に松山駅に到着です。

 

(次は「しおかぜ」号に乗り換えです)