8600系「いしづち」号で高松駅へ【JR四国バースデイきっぷの旅③】

新居浜駅から高松駅へは特急列車で1時間半弱です。JR四国の特急列車は、大半が単線区間だとは思えないほど所要時間が短いです。

 

f:id:tyoutyouuo:20211006211752j:plain

(高松駅に到着した8600系上り「いしづち」号と高松駅を出発する8000系下り「いしづち」号)

新居浜駅から「いしづち」号で高松駅

 この日は7時にホテルを出て、新居浜駅に向かいます。昨晩は暗くてよく見えませんでしたが、新居浜駅に続く通りには、何やら鉄道関係のモニュメントが飾ってありました。

 

f:id:tyoutyouuo:20211006210609j:plain

(廃線跡を思わせるモニュメントですが…)

 

別子銅山新居浜駅・新居浜港を結んでいた別子鉱山鉄道の廃線跡かなと思ったのでが、そういうわけではなさそうです。別紙鉱山鉄道は、もう少し東側を走っていたようです。

 新居浜駅は改札口がそのまま1番線ホームとつながっていて、国鉄時代の面影を残しています。国鉄時代の古い駅は、大きな荷物を持った長距離客の利便性を考慮し、1番線を改札口に直結させ、優等列車を1番線に入線させるということが行われていました。

 

f:id:tyoutyouuo:20211006210708j:plain

(新居浜駅は改札口と1番線ホームが直結しています)

 

現在では、多くの線区で複線化されているので、この方式だと上りか下りのどちらかの乗客は跨線橋をまたいで移動する必要があり不便になってしまいます。というわけで、現代の駅舎ではこの方式で建築されることはほぼありません。現代では、用地の節約と、線路の両側の移動の便を兼ねられる橋上駅舎が多くなっています。

 

f:id:tyoutyouuo:20211006210758j:plain

(8600系は短編成の車両を複数連結して運転されることが多いです)

 

 乗車するのは7:22発の「いしづち」号です。例によって「しおかぜ」号と併結しています。やってきたのは8600系電車でした。8600系電車は、2014年に登場し、これまでに7編成が製造されています。7編成といっても、1編成が2両か3両なので、合計で17両しか製造されていません。登場の経緯が、2000系気動車の置き換え用であり、併結分離運転に対応するため、1編成の両数が短くなっているようです。

8600系では、曲線区間を高速通過するために空気ばね方式の車体傾斜装置を採用しています。JR四国では、2000系気動車で、気動車に世界で初めて制御付き振り子装置を導入しました。しかし、振り子装置は整備にコストがかかるため、8600系では整備コスト削減のため、振り子式ではなく車体傾斜装置の導入を試みました。

 

f:id:tyoutyouuo:20211006210918j:plain

(8600系に乗っていると予讃線の田園風景が高速で流れていきます)

 

同様の動きは、JR東日本E351系E353系の関係にも見られます。E351系は中央線の曲線区間に対応するために振り子式を採用しましたが、E353系では車体傾斜装置を導入しています。

 しかし、カーブの多いJR四国では、車体傾斜のための空気が足りなくなるという問題が発生しました。8600系では、あらかじめ空気不足を予測して空気タンクを増設していましたが、それでも足りないため、走行時には8000系に比べて車体傾斜の区間が少なくなっています。そのような経緯があってか、8600系は登場から7年経っても7編成が導入されたのみで、量産化には至っていません。JR四国の電車特急 (「しおかぜ」号、「いしづち」号)の多くは、登場から30年近く経過し、振り子装置を搭載した8000系によって運転されています。同様の経緯は2600系気動車と2700系気動車にも見られます。2600系気動車は空気ばね方式の車体傾斜装置を採用しましたが、カーブの多い線区では空気不足になることが分かったため、量産化が見送られ、代わりに、2600系をベースに振り子装置を採用した2700系気動車が量産化されることになりました。2600系気動車は、比較的カーブの少ない高徳線の特急「うずしお」号で、2700系気動車に交じって一部の運用を担当しています。JR四国のカーブの多い線路は、車体傾斜装置では対応できないようです…。

 

f:id:tyoutyouuo:20211006211107j:plain

(津嶋神社が見えました、これに参るために毎年2日間だけ臨時駅が設置されます)

 

 8600系は、外観も特徴的です。前面の黒い顔は、蒸気機関車をイメージしたもので、デザインコンセプトは「レトロフューチャー」とのことです。車体色はオレンジとグリーンで、これは「瀬戸内の温暖な風土」と「穏やかで美しい四国の自然」、「愛媛」と「香川」を表すものとなっています。

オレンジとグリーンは、外観だけでなく、座席の色にも採用されています。座席は、カーブ通過時の遠心力を和らげるため、ホールド感の強いものになっており、実際に座ってみても快適でした。客室内は走行音も静かで、現代にふさわしい新世代の車両だと感じました。JR東日本E353系に近いかもしれませんね。

 

f:id:tyoutyouuo:20211006211505j:plain

(今回はオレンジ色の車両に乗車しました)

 

予讃線は景色がよく、山側には田園風景、海側には瀬戸内海の景色が見え、見ていて飽きることがありません。予讃線はほとんどが単線区間でありながら、特急を優先したダイヤが組まれており、行き違いのための停車も最小限に抑えられています。所要時間は複線で運転した場合とほぼ変わらないそうです。もっとも、このしわ寄せは普通列車のほうに行っており、JR四国普通列車は特急列車に比べてかなり所要時間が長いです。複線化の恩恵は普通列車のほうが大きいようです。

 

f:id:tyoutyouuo:20211006211557j:plain

(単線なので下り特急列車との行き違いのために停車することもあります)

1時間と少しで高松駅に到着、8:45高松駅着。新居浜駅で乗ったときは7両編成だったのに、高松駅で降りると2両編成になっていて不思議な感じがします。

 

f:id:tyoutyouuo:20211006211653j:plain

(「いしづち」号は2両編成で高松駅に到着)