「山陰めぐりパス」の旅 1日目① (新大阪から新幹線と「やくも」・「とっとりライナー」を乗り継ぎ鳥取へ)

 新大阪ー山陰地方の往復券と山陰エリアのフリーパス4日分がセットになって13000円の超お得なきっぷ「山陰めぐりパス」を使って、鳥取県島根県を観光してきました。4日間の旅程を記事にまとめたいと思います。1日分を2‐3記事にし、順に公開する予定です。

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(岡山駅から乗車した381系やくも号。山陰デスティネーションキャンペーンラッピング編成でした)

 ・「山陰めぐりパス」とは

 「山陰めぐりパス」は京阪神―山陰地方の往復券と山陰エリアのフリーパスがセットになった券です。しかもこの券で特急にも (追加料金なしで!) 乗車できます。4日間有効で新大阪出発だと12000円 (京都発だと13000円、神戸・姫路発だと11000円です)。大阪―鳥取スーパーはくとお往復するのと同じ値段なのでとてもお得です。ただし、往復の経路が少し特殊で、片道は新幹線とやくも号を利用し、もう片道はスーパーはくと号を利用することになっており、往復で同じ経路を利用することはできません。しかし大阪―鳥取の往復分の料金で山陰エリアが4日間も乗り放題になるとはかなりの奮発です。なぜここまでできるのか?

 この夏、JR は「山陰デスティネーションキャンペーン」を行っていました。「デスティネーションキャンペーン」とは JR と自治体が共同で行う誘客キャンペーンで、期間中は観光列車が走ったりお得なツアーが組まれたりします。観光列車はキャンペーンが終わった後も運行されることが多いようです。せっかく列車を作ったのに (たいていは改造ですが…) 短期間で運行をやめるのももったいないですからね。「山陰デスティネーションキャンペーン」では境線の「鬼太郎列車」がリニューアル、山陰線の観光列車「あめつち」の運行、鳥取―米子間の臨時特急「大山」の運行のほか、京都発の「サンライズ出雲」が運転されました。「山陰めぐりパス」も「山陰デスティネーションキャンペーン」の誘客のために発売されたのでしょう。中国地方発の「山陰フリーパス」、山陰エリアのフリーパスのみの「山陰満喫パス」なんていうのもあります。なお、「山陰デスティネーションキャンペーン」は2018年7月から9月までの予定でしたが、「平成30年7月豪雨」の影響でJR西日本は多くの区間で不通になり、山陰への観光も打撃を受けました。観光需要を回復させるため、「山陰めぐりパス」や「山陰フリーパス」は2018年12月まで発売期間を延長しています

 

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(「山陰めぐりパス」。かえり券が山陰エリアのフリーパスを兼ねています)

 

・出発まで

 「山陰めぐりパス」を見つけたのは6月ごろ、この夏お得な旅行をしたいな~と思ってネットサーフィンをしていて見つけました。山陰での3泊4日は特急を駆使して自由に移動できるので、8月上旬の決行日に向けてぼちぼち旅程を考えていました。しかし「平成30年7月豪雨」の影響で、中国地方の鉄道は多くの区間で不通となりました。山陽本線は2018年9月の時点でも不通のままで、貨物列車は山陰本線経由で迂回運転を行っているほどです。「山陰めぐりパス」の往復で利用する伯備線因美線智頭急行線も不通となり、「山陰めぐりパス」も発券中止になってしまいました。因美線智頭急行線の「スーパーはくと」は比較的早く運転が再開され、山陰への玄関口は確保された形になりましたが、伯備線の再開は当初8月中旬以降と発表され、旅行が実施できるかやきもきしました。結局、伯備線も8月1日から運転再開となり、それに伴って「山陰めぐりパス」も無事に発券できました。運転再開に向けて尽力された関係者の皆様に感謝申し上げます。

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(美しい伯備線の車窓。豪雨で土砂災害を引き起こしたとは思えませんね)

 

・新大阪→岡山、「のぞみ」よりも「みずほ」がおすすめ

 「山陰めぐりパス」では往復は特急の指定席、フリーエリアでは特急の自由席を利用することができます。今回は往路で新幹線とやくも号、復路でスーパーはくと号を利用することにしました。新大阪―岡山間の最速達種別は東海道新幹線から直通してくる「のぞみ」と新大阪始発の「みずほ」です。どちらも車両はN700系ですが (一部は700系)、違いもあります。「のぞみ」は普通車が5列、グリーン車が4列なのに対し、「みずほ」は自由席が5列、指定席とグリーン車が4列となっています。つまり、指定席を利用する場合、「のぞみ」だと5列シートとなるのに対し、「みずほ」だと4列シートを利用することになります。これは「みずほ」を利用するしかありません。ということで、時刻表と睨めっこして「みずほ」の時間を調べ、指定席を確保しました。新大阪8:59発。東海道新幹線北陸新幹線にはよく乗りますが、「みずほ」に乗るのは初めてです。座席は肘掛けや枕、ドリンクホルダーまでついていて見るからに快適そうです。9:45岡山着。岡山まで1時間弱、4列シートで快適な時間を過ごすことができました。

 

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(N700系で運転される「みずほ」)

 

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(「みずほ」の普通車指定席。4列シートで幅が広い他、座席も東海道新幹線の普通車に比べて何となく豪華です)

 

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(新大阪出発直後、「瑞風」がいました)

 

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(と思ったら、もうすぐ岡山駅に到着です)

 

・岡山→米子、自然振り子車を堪能!

 岡山では19分の乗り換え。ここで昼食の駅弁を買いました。少し早いですが、米子から乗る「とっとりライナー」はテーブルがありませんので、テーブルが使える「やくも」の中で弁当を食べたほうがよいだろうという判断です。ホームに降りると381系「やくも」が待っていました。

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(381系やくも号。隣には黄色い食パン顔の電車が止まっていました)

 

 381系自然振り子装置を搭載しており、速度を落とすことなくカーブを通過することができます。これによりカーブの多い伯備線を高速で走り抜けることができるようになり、伯備線特急の時間短縮に大きく貢献しました。一方で自然振り子式は「制御付き自然振り子」や空気ばねによる車体傾斜装置」に比べて乗り心地が悪いという問題点があります。381系は「乗ると酔う」という噂もあり、実際に列車内にエチケット袋も用意されています。

 

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(車内の洗面台にはエチケット袋が装備されています)

 

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(ぐったりはくもゆったりやくも)

 

一方で、乗り心地改善のためにバケット式の座席に改装するなど工夫も見られます。現在、「やくも」用の381系は全ての編成で改装が完了しており「(ぐったりはくも) ゆったりやくも」の愛称が与えられています。しかしながら、381系は徐々に運用を減らし、かつては様々な方面の特急列車として走っていましたが、現在の定期運用は「やくも」のみとなっております。また、「自然振り子」車両も数を減らしています。「制御付き自然振り子」は全国各地の特急電車・気動車に採用されており、「車体傾斜装置」も新幹線やJR東日本E353系JR四国の8600系などで採用されていますが、「自然振り子」を採用しているのは現在381系のみとなっております。国鉄型特急も少なくなっていますから、381系は鉄道マニアにとっては貴重な存在といえるでしょう。

 

 10:04岡山発。途中の倉敷までは山陽本線を走ります。この区間は特にカーブもなく、普通の特急列車と同じです。倉敷から伯備線に入りしばらくすると山越えの区間になり、カーブが多くなります。381系「やくも」は振り子を駆使してカーブ区間も高速で通過します。酔うということはなかったですが (一般的に列車で酔うことは難しいでしょう)、普通の特急電車とは違う3次元的な揺れがあり、トイレに向かうために通路を移動するのには苦労しました。「やくも」の中で、岡山駅で買った「たこ飯弁当」と食べて、しばらくすると米子に到着。12:17米子着。

 

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(たこ飯と味わい弁当。瀬戸大橋線の名物のようです…)

 

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(伯備線山陽新幹線の下をくぐります)

 

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(中国山地を越えるともうすぐ米子です)

 

・米子→鳥取、「とっとりライナー」のたくましい走り

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 米子駅では40分ほど余裕があったので改札外に出てみました。この日も暑かったので駅前のコンビニで飲み物を補給。駅前を見回すと銀河鉄道?のモニュメントが目につきました。「銀河鉄道って東北では?(←宮沢賢治のイメージです、SL銀河も走っていますし)」と思って案内板を見ると、銀河鉄道は関係なく「山陰鉄道発祥の地」を記念したモニュメントということでした。米子は日本で12か所の「鉄道の街」の1つになっており、JR西日本の米子支社もおかれています。また、駅の近くには転車台もあり、鉄道の拠点であることを思わせます。

 

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(銀河鉄道ではなく、「山陰鉄道発祥の地」のモニュメント)

 

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(今年は大山開山1300年にもあたるそうです)

 

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(とっとりライナー)

 

 米子からは「とっとりライナー」に乗車。12:16発のスーパーまつかぜ号に乗れるとよかったのですが、-1分乗換なので断念しました。「とっとりライナー」があるのがまだ救いですが、岡山から米子経由で鳥取に向かうにあたり、場合によっては米子で1時間ほど足止めされることもあるので注意が必要です (岡山―鳥取間は智頭急行線経由の「スーパーいなば」の利用が主流なので米子での乗り継ぎはあまり考慮されていないのでしょうか)。「とっとりライナー」はキハ121・126系で運転されます。運転台が両側についていればキハ121系、片側のみなら126系です。キハ121・126系は山陰本線の高速化のために導入された車両で、外見はシンプルですが、なかなかたくましい走りを見せてくれます。また、内装もボックスシートですが、それなりに快適なシートが使われています。12:56米子発。鳥取まで1時間40分の長い乗車です。遠くに見える大山、山陰の田園風景、日本海に向かって立つ発電用風車など、変化に富む車窓でまったく飽きませんでした。山陰本線は車窓が美しく、この区間を走る観光列車「あめつち」でも美しい車窓がアピールポイントの一つになっています。「あめつち」はこの旅でも最終日に乗車します。14:35鳥取着。これから鳥取砂丘に向かいます。

 

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(雲をいただく大山)

 

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(田んぼが広い!)

 

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(鳥取駅は有人改札でした)